2013年7月20日土曜日

男と女は難しい。10-2.

10-2.男と女は難しい。

東丸も、そして雪乃も本当の気持ちを言えば、生き返る方法を探したいだろう。しかしながら、幽霊である事実と、既に起きてしまった事実と、その間を埋める何かを見つけること、見つける方法すらも見当がつかなかった。

「まぁ、幽霊になる訳だから、きっと天国とかあると思うんだよね。だったら、遅いか早いかの違いじゃない?」

「……うん。」

「あ、そもそも地獄を選択肢に入れてないあたりに引いた?」

「勘ぐりすぎだよ。」

確かに、勘ぐりすぎだ。どちらかと言うとワンセットで用意していた発言のようにも思えるのだけど、雪乃はこういう「ぽい」ことをする女の子だったし、東丸も、それが苦手ではなかった。

「一夏くらいゆっくりしても?」

それは、中間の答えとして東丸はそう思っていた。

「んー。だめだめ。そうやってのんびり構えていると、冬になったら夏を思い出して、夏になったら鍋物とかが恋しくなって、気がついたら年をとってるって。」

「どういうこと?」

「親戚のお姉さんが言っていた。」

二人の会話は、ここから完璧にロストした。つまりは、期間と目的を設定しておかないと、人生はズルズルになると彼女は言いたかったようである。中学生女子も、しかも幽霊になってからも愚痴って言うのですね。親族の女性のだらしなさをひとしきり言った後に、言う。

「まー、綿貫君も、今のままじゃ良くない時が来るかも知れないから、早いにこしたことないってことですよ。」

彼女は言葉の裏に「気付いてね」という意味を込めていたのだけど、東丸は気付いてなかった。言葉にしないと伝わらないこともあるもので、幽霊になっても、男と女は難しい。

ブログ アーカイブ

新着ブログ

ZenBack