2013年7月20日土曜日

二人で四つ。14.

14.二人で四つ。

午後になって、少しだけ陽が陰った頃、二人は出かけることにした。夕飯前だけど、アイスの一本くらいはたいしたことないだろう。風は温いが、日中の暑さに比べると穏やかであり、心地よい。あの日、寄らなかったコンビニを目指して、二人はとことこと歩いている。

オーパーツ。さっきまでは元気よく話していた二人が急に黙ってしまったのは、アイスが今起きていることの核心であり、それをなすことで二人の今の関係性が終了することを感じているからかも知れない。彼女の心残りのアイス。それが成仏のきっかけ、オーパーツなのかも知れない。

コンビニについた。二人が子どもの頃は、何か別の商店で、今もその名残なのか、明らかにコンビニぽくない商品も店先に並んでいる。きゅうりとか。ドアの近くには古めかしい風鈴が釣り下げられており、それはきっと昔からあったのだろう。建物だけが新しくなったのかも知れない。

「何がいい?」

念のため、店に入る前に聞いておく。

「パルムの新しい味。」

「パルムね。」

短く確認すると、東丸は自動ドアに向かった。

「あ。」

「?」

「あいすまんじゅうが入ってたら、そっちの方が。」

「アイスマンジュウ?」

「あ、やっぱ私もついてく。お店の中では話しかけないから。」

一つだけ補足をしておくと、『あいすまんじゅう』は美味い。二人は店内に入り、アイスコーナーに向かう。冷凍コーナーには明らかに売り物でない冷凍食品も一緒に入れてある。これをレジに持っていったら、店の人はなんて言うのだろうか。パルムの新しい味は二つあり、あいすまんじゅうもあったので、二人で四つ。事情を知らない人からしたら、一人で四つアイスを大人買いする中学生に見えるかも。歯の抜けた店の人は「ドライアイスいるけ?」と聞いたが、東丸は断った。雪乃は、少し欲しそうだった。

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