2013年7月20日土曜日

この時のことを一生忘れないであろう。13.

13.この時のことを一生忘れないであろう。

子どもの頃にピーマンが苦手でも、大人になったら食べられるようになる人もいる。「大学入ってビールを飲むようになったら味覚が変わりましたわ。」なんて声もある。お前、浪人してないだろ。十九歳だろ。子どもがピーマンが嫌いなのは、苦味を自然と毒物と感じるかららしい。そして、それが平気になるということは、味覚が鈍化した証拠らしい。味覚に限らず、人間は生きていく中で、色々な感覚を鈍化させて行く。季節に対する感情も、十四回目の夏と、三十三回目の夏とでは、やはり感じ方が変わってくる。きっと、それは、来年も夏がやってくることを意識した数の違いなのかも知れない。

二人の十四回目の夏は、これまで知覚している九回ばかりの夏とは違い、そして、同じような夏は、もう二度と来ないだろう。彼らがそう感じているとは思えないが、『夏』という言葉が生まれる前から夏を経験している私に比べると、格段に鋭く、そして全身で夏を感じているハズだ。つまりは……。

「あ、暑いよ~。」

「まぁ、夏だしね。」

幽霊が暑さを感じるのか?というのは、既に過ぎた話題である。何しろ、この幽霊はうどんを食う。いっけね、うどんを食べるのは、この後か。なんだかんだで雑談したり、夏休みの宿題をしたり、時々二学期の予習をしたり、何もしなかったりで時間だけが過ぎていた。

「アイス食べに行こうか?アイス。コンビニのアイス。」

「あ、ああ、いいね。」

アイスと聞いて、東丸は、やはり思うところがあった。

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